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HONDAのWebコミックに「おんどとり」が登場! 農業女子漫画『みのりの大地』の舞台となった倉吉市を訪れてみた

※記事中の組織名、拠点名、部署名などは記事公開当時のものです。

きっかけは、ツイッターだった。
タイムラインに流れてきた、漫画の中の「おんどとり TR42」。
そのつぶやきを辿った先には、スイカの名産地で活躍するおんどとりの姿があった。

日付 2020年3月
訪問先 鳥取県倉吉市
使用機器 TR42
使用目的 スイカの生産現場での温度管理

はじめに:発見の経緯

ティアンドデイではTwitterの公式アカウントを運用しており、活動の一環として自社に関係ありそうなキーワードを含むツイートを日々チェックしている。
ある日のユーザと思しき方のツイートに、漫画に描かれたおんどとりTR42の姿があった。

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「おんどとりが漫画に?」

ツイートから掲載元を辿っていくと、ホンダのパワープロダクツ(耕うん機や芝刈機・発電機・除雪機・船外機など、ホンダの汎用エンジンを使った製品)を紹介するブランディングサイトに行き着いた。

そのサイトコンテンツのひとつに、おんどとりが登場するWebコミック「みのりの大地」があったのだ。

「みのりの大地」

みのりの大地(作:ばどみゅーみん)は、株式会社マックスファクトリーが販売するプラモデル「みのり with Honda耕転機 F90」のキャラクター「みのり」を主人公として、ホンダが制作したWebコミックである。

物語の舞台は鳥取県倉吉市。都会で暮らしていた主人公が農業に目覚め、倉吉の名産品であるスイカの生産に挑戦する様子を描く「農業女子」漫画作品だ。
ちなみに、モデルとなったプラモデルのもう一つの主役である「Honda耕転機 F90」とは、ホンダが1966年に発売した耕うん機の名機で、こちらも作中で活躍する。

ホンダ パワープロダクツ「みのりの大地」
https://ja.honda-powerproducts.com/comics/

みのり with ホンダ耕耘機F90
https://www.goodsmile.info/ja/products/6806

物語の舞台・鳥取県倉吉市を訪問

実際にスイカ畑でおんどとりが使われているところを見てみたい。そしてお話を聞いてみたい。

そう考えた我々は、ホンダパワープロダクツのサイトを運営する本田技研工業株式会社に取材の許可を頂いた上で、漫画の執筆を担当された「ばどみゅーみん」さんこと三浦さんと、倉吉市役所商工観光課の垣原さんにコンタクトを取った。
そして、物語の舞台となった倉吉市の市役所で、垣原さんと三浦さんにお話を伺うことになったのである。

※ この取材は、全国に緊急事態宣言が発令される以前の2020年3月に行われました。

Q. みのり大地の企画自体はどのような経緯で生まれたのですか?

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垣原さん「そもそも倉吉市は、フィギュアやアニメ、漫画などのポップカルチャーと連携したまちづくりを実施しているんです。小さな町ですが、年間60万人が訪れる倉吉白壁土蔵群など昔ながらの街並みが残っていて、中高年の方を中心に多くの観光客の方がお越しになっています。そこに加えて、若い世代や外国からの観光客にも来ていただこうという取り組みです。」
そのきっかけは平成26年、倉吉市が株式会社グッドスマイルカンパニーという大手フィギュアメーカーの日本初の工場を誘致したことだった。

垣原さん「グッドスマイルカンパニーさんも日本に初めて工場を作るにあたり色々候補地を検討されたそうなのですが、ちょうど鳥取県が「まんが王国とっとり*」のキャッチフレーズのもと、色々な取り組みをしていてグッドスマイルカンパニーさんのことも知っていたこともあり、当時企業誘致に力を入れていた倉吉市に決まったのです。グッドスマイルカンパニーさんがメインとされるのはフィギュアの製造なのですが、レーシングチームを持たれたり、アニメ制作やイベントを企画したりと、エンタメに強い企業さんなんですね。その点を活かして、クールジャパンのコンテンツとレトロな街並みを調和させた新たな観光客の誘致につなげたい… と考えて始まった活動です。」

* まんが王国とっとり: 鳥取県は「ゲゲゲの鬼太郎」の水木しげる氏、「名探偵コナン」の青山剛昌氏、「孤独のグルメ」原作漫画の谷口ジロー氏らをはじめとして多数の漫画家を輩出しており、県を挙げて漫画に関連した観光や産業の振興を図っている。また、「ひなビタ♪」というWeb連動型のキャラクターバンドコンテンツがあり、その舞台のモデルが偶然倉吉市だったことから、2016年からはひなビタ♪、グッドスマイルカンパニー、倉吉市の3者が連携して様々な取り組みを続けている。

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垣原さん「そんな中、グッドスマイルカンパニーさんの連携企業のマックスファクトリ―さんというところが、ホンダさんの耕うん機とオリジナルキャラクターのみのりちゃんをセットにしたプラモデルを販売されていまして。そこからの派生で、ホンダさんがプラモデルをきっかけにした漫画制作を企画されたんですね。舞台や設定など何も無い状態で始まったのですが、グッドスマイルカンパニーさんの工場がある倉吉は農業も盛んでもあるし… ということで倉吉市にお話を頂いて、そこからとんとん拍子に進んできました。」

―― ばどみゅーみんさん(三浦さん)が漫画をお描きになるというのは、どの時点で決まっていたんですか?

垣原さん「倉吉市にお話を頂いたときには、もう三浦さんの方で描かれることが決まっていました。ただ、舞台をどこにするのか、どんな生産物を扱ったらいいのかなども白紙の状態でした。
色々な候補がある中で、市の名産品がスイカということもありまして、スイカ農家の設定に決まりました。」

三浦さん「他の野菜の候補もあったのですが、品種として目立つということと、お話を聞けば聞くほど苦労話が出てくる作物、ということで選ばれたと思います。
私は農業はまったく分からない状態でお話を頂いたので、最初にこの倉吉市役所でのキックオフミーティングに参加した時は正直に『何も知りません、助けてください』とお願いしました。そこで色々とアイディアを出していただいて、その中でスイカがいいのではないか?という流れになりました。」

垣原さん「鳥取県自体がスイカの一大生産地で、倉吉市でも倉吉スイカという品種を栽培しているのですが、それとは別に『極実すいか』という倉吉独自のブランドスイカがあるんです。通常スイカを栽培するときはかんぴょうの台木にスイカを接ぎ木するのですが、極実すいかはスイカの苗木にスイカを接ぎます。実のシャリ感が強く糖度の高いスイカができる反面、土の養分を凄く吸うので連作障害を起こしやすく生産も難しい。なかなか数が作れない品種で、東京に出荷されれば1玉数千円~1万円くらいで販売されるブランドスイカになっています。この特徴ある地元のスイカを新たな漫画とのコラボという形でPRしたい、という目論見もありました。

また、農業だけじゃなく、集落の生活とか田舎暮らしにもスポットを当てられれば、と思っていました。」

―― 三浦さんの漫画家としての経歴を聞かせてください。

三浦さん「私は脱サラして漫画家を始めたクチで、最初はマンガの投稿サイトに掲載していました。そのマンガをモーターマガジン社(「月刊オートバイ」などを発行する老舗の出版社)の役員さんに見つけていただいて、モーターマガジン社さんから自分の漫画を出してもらったんです。モーターマガジン社さんはホンダさんと繋がりがありますから、その流れでご紹介いただいて「みのりの大地」の企画に参加することになりました。元々カラーで描いていたので、Webコミック向きではあったのかもしれませんね。」

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Q. 漫画の中でも数々のトラブルが発生しますが、それらも三浦さんが実際に取材しながら描かれたものですか?

三浦さん「最初の定植には間に合わなかったのですが、その後は毎月神戸から倉吉に通って、スイカのことを勉強させてもらいながら話を作っていきました。」

―― 作中でも極実すいかが少し名前を変えて登場していますね。

三浦さん「ブランドスイカもそうですが、作中のエピソードも農家さんたちが作業中にてんやわんやだったのを目の当たりにしたり、実際にあった失敗の内容を伺ったりして考えましたね。

漫画に出てきたおんどとりの話は、実際にJAのスイカ生産部の取り組みとして、おんどとりを使ったデータの共有とベテランのノウハウの継承ということをやっていらしたので、それを元に描かせていただきました。漫画ではおじいちゃんから孫への継承という形にしましたけれど。そのエピソードの取材のときに機器を見せていただいたら、それがおんどとりだったんです。」

「みのりの大地」は農業に挑戦する若い世代の女性を主人公に据え、その奮闘を描いた作品だ。だがそれと同時に、長年の勘や感覚に頼らず、データと再現性をベースに作物を育てることの大切さを「農業は科学だ!」というメッセージに込めて発してもいる。作中でも存在感を放つホンダの耕うん機F90が農業に携わる人の作業負荷を軽減してきたように、農業分野でのおんどとりは、ベテラン世代が培ったノウハウを新しい世代に伝える役割を果たしているのだと知った。

スイカ生産部のみなさんと、おんどとりの使われている場所で

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ここから実際におんどとりを使われている農家さんの圃場に移動し、地域のJAスイカ生産部の方々とお会いすることになった。

お話を伺ったのは、指導部の部長でいらした大田さん、鳥取県の農業改良普及委員の澤口さん、研修生の井中さんの3名だ。
大田さん「良い機械を紹介していただいて! 大変助かってます。」

お互いの自己紹介の後、すぐに大田さんから嬉しいお言葉を頂いた。
おんどとりが設置されている様子を拝見させてもらいながらお話を伺う。

Q. どのような使われ方をしているのか教えてください。

大田さん「去年はハウスの内トンネルの、実際に作物が植えられているところの温度を取っているだけだったんですけれども、気象台の記録に残る温度と現地の温度がどれくらい差があるかというのを外気温として調べたいな、と思いまして。」

外気温も個別に測るべく、ハウスの外にもおんどとりを増設したとのこと。

大田さん「気象台の観測地点が海沿いの方で、私たちのいる山間部の温度とは1℃から2℃の違いがあるんですよ。特に霜が降りる時期などは気温が何℃まで下がっているのか確認するのが大事なのですが、一年を通して気象台の発表する温度と現地の温度がどれくらい開いているのか、分かるようにする目的もあります。

スイカの収穫後は小ネギを作るので、春から夏だけじゃなくて冬にかけての温度も測っておきたいんです。
もちろん夏場のハウス内とハウス外の温度差も見たいので、去年はハウスの中だけに設置していたおんどとりを、今年は外にも置いて測ることにしたんです。」

―― それはJAの、スイカ生産部さんの取り組みとしてですか?

大田さん「はい。去年、鳥取県の中部地区、つまり倉吉地区と隣町の大栄地区をはじめとした数地区で、ポイントごとにおんどとりをつけて、地域全体で温度管理をしていくことにしました。観測地点で言うと二十数ポイントですね。農家によって条件も違えば管理の仕方も違うので、個々の温度管理がどうなっているか、できるだけ地域全体で把握して温度管理を統一したもので見たいな、ということでやったんです。」

澤口さん「鳥取県の事業を活用してJA鳥取中央が入れたおんどとりが合計43台、型式はTR42です。
防水で使い勝手が良くて、ハウスの外からでもデータが取れるという理由でBluetoothのタイプを導入しました。ハウスの中の温度データを、車の中からでも取れるので雨の日とかも便利ですね。」

―― 設置されているみなさんが、それぞれのスマホでデータを取るようにしているんですか?

澤口さん「基本的に、事業で設置したTR42に関しては、設置していただいている方にご自分でデータ取ってください、とお願いしています。あとは私や農協の職員さんがデータの回収をフォローしています。機器を設置していただいた方には、クラウドの『おんどとり Web Storage』のこともお話して、クラウド上でデータが比較できることをお伝えしました。」

―― 農家さんそれぞれが「おんどとり Web Storage」のアカウントを持っていらっしゃるということではなく?

澤口さん「全台数を、ひとつのアカウントで管理しています。そうやって4つの産地の代表地点で比べてみると、倉吉と大栄では温度管理のやり方が違うね、など今まで知ることがなかった意外な事実を可視化することができました。」
倉吉地区に18台、大栄地区に16台、それ以外の地区にも数台ずつ設置されているという。

澤口さん「温度が広い地域で見えるようになったのが去年のことです。ただ、先ほどの大田さんのお話にもあったように、去年は外気温を測ってなかったんです。倉吉と大栄では外気温にも違いがあるんじゃないか? という疑問から、外気とハウスの中の温度の差を見ながら、どれくらい保温の管理をしているのか、あるいはスイカの出来がどうだったのか、というところを結び付けて考えようという話になりました。例えば倉吉はもうちょっと温めなくちゃいけないとか、あるいは他の産地はもっと冷やした方がいいとか、そういう知見に繋げられればいいな、と思って。」

大田さん「言いたいこと、全部言ってもらいました(笑)」

「見える化」の重要性 ― 後進の指導のためにも、データが実際に見えることが大事

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大田さん「今うちの研修生が来ているんですけれど、若手には見える形で教えてあげないとダメなんですよ。我々だったら身体感覚で、今何℃くらいあるなって大体分かるんだけど、早くそういう感覚を身につけてもらうためにも、データを見える形にするのが凄く大事なんです。」

井中さん「一つ一つの作業について、このときにこれをしたら、これくらいの温度になる。じゃあこうすれば適温管理ができるね、というのが作業と温度とセットで見られるようになるので学びやすいです。」

―― 漫画「みのりの大地」では、主人公の祖父がスイカ栽培のマル秘ノートをつけていて、データ管理を孫であるみのりに伝えていく、というシーンがありましたけれど…。

大田さん「そう、見える化することで家族との共有もできますし。若手の人たちのグループで話をするときも、ちょっと閉めるのが遅いから保温が足りないとか、逆に高温になり過ぎているからもっと適温になるように換気を多めに開けて換気しようとか、そういったことが話し合えるのでね。
そういうことをしていくと製品のバラツキが出ないので、市場にも自信を持って送れます。そういった面でも大変助かっています。」

Q. 温度管理におんどとりを選んでいただいた理由は何ですか?

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澤口さん「実は普及員にiPadが支給されまして。それでiPadを使って『なんかせないけん』という時に、何かこういうスマートデバイスじゃなきゃできないようなことやりたいなと思って色々探したんです。Bluetoothで何かできないかな、と思った時に、御社のおんどとりが使える!というのがあって。

今までおんどとりって、専用の収集端末を現場に持って行ってデータを回収したり、おんどとりそのものを持ち帰ってパソコンに繋いでデータを取り込んで見るしかない、というイメージだったんです。その場合は僕らが収集したデータを加工して農家さんに渡すわけですが、そうすると農家さんがデータを見るのがどうしても1日2日遅れていくので、それが面白くなかったんです。やっぱり僕が現場でデータを見て『こうなってますよ』って言って回るのを、皆さんにそれぞれやって欲しいと思ったものですから。

BluetoothでiPadにデータ取れる、これ(TR42)いいじゃないか!と思って普及所で3台買ってもらって、大田さんの所ともう一人別の指導員さんの所に付けてもらいました。設置から1週間くらいでお二人が『これええわ』って事で、個人で買われまして。

1年目は合計6台で、指導部の中で倉吉のデータを共有してみました。共有する中で『〇〇さんの所がこうですよ』ってクラウドで温度を比べながら見ていると、話をするきっかけになるんですね。先ほど大田さんが言われたように、温度管理のちょっとした工夫だったりとか、農家さんによって全然やり方違うので。例えば『なんでお前んとここうなの?』『いやうちは3時半には閉めてる』とか、『隙間がどうしてもあるんだよね、古いハウスだから』『隙間埋めるんならこうやってビニール貼ればいいじゃん』とか、そういう話ができるようになって、これは面白いな!となって。

その前は、温度を見るためにもうちょっと大掛かりなシステムを入れてみようか、という話をしていたんです。でもそのシステムを何百万円もかけて入れたところで、本当に使えるかどうか分からない。スイカに必要かどうか分からないわけです。そういった時におんどとりを見ると、割と手頃で農家さんが個人で1台2台『ちょっと買ってみるか』と言ってもらえる値段で買えて、非常に使い勝手が良い。そういうのがおんどとりの広がるきっかけだったと思います。」

もともとティアンドデイのおんどとり自体は、農業普及所でたくさん台数をお持ちだったらしい。しかしデータの回収をするためにパソコンにケーブルで繋いだり、機器のボタン操作をしたりする必要のあるタイプだったので、一般の農家さんには勧めづらかった。
機器のボタン操作が不要で、雨天時にも車から降りずにスマホでデータ回収できるBluetooth通信タイプのTR42は非常に好評だそうだ。

大田さん「めちゃめちゃいいよな、これ。機械音痴の俺でもできる。」

澤口さん「割と操作も簡単なので、スマホに慣れてればすぐ使えますね。」

大田さん「これ(TR42)があるとないとでは大違いです。前はあまりみんな気にしていなかった温度の上がり下がりの推移がすぐにスマホで分かる。見えてくると、やっぱりみんな気にしだすんですね。若手が質問したり、提案したりするときの材料としても温度をだいぶ気にするようになりました。」

澤口さん「若手中心に、これがないとスイカが作れん、っていうくらい頼りにしてますんで。
これなしではできないと言ってもらってます。」

大田さん「助かってますよ。なくてはならないレベル。」

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澤口さん「今、倉吉の産地では研修生を受け入れて農家を増やしていこうという活動を進めているんです。これから農業の経験のない若い人がどんどん増えていく産地になるので、データによる温度管理の必要性もどんどん増していくんだろうなと思います。」

大田さん「親元で農業やってる若い人たちも、親世代の言っていることが分からないんですよ。ハウスのビニール降ろしてこい、とか開けて来い、とか。最近の若い人は理由がちゃんと説明されないと嫌になっちゃうでしょう? 温度が見えれば『おやじ、これじゃ冷やしすぎだよ』とか逆に若い人から言えるようになる。
あと最近はみんなスマートフォン持ってるでしょ。それはこれからの主流だから、とにかくスマートフォンで確認できるものが必要だと言ってます。その場で、すぐ分かるし。」

澤口さん「若い人だけでなくて、ベテランさんにも非常に重宝してもらっているんですよ。大栄地区で20年以上スイカ作ってる農家さんから、『自分の管理に自信が持てた』という声がありました。温度の根拠がグラフで見えて非常に良かったと。ご本人だけじゃなくて、ご家族だったり雇用されている方に指示を出すのにも、『20℃になったら開けといてくれ』とか言えるのでいいですよね。」

大田さん「私より年齢が上の、もう60歳以上の人も、付けてもらってみたら自分たちの感覚は間違ってないんだな、ということの再確認になったと言って喜んでらっしゃった。そういう意味で若手だけでなくベテランの人でも、自分たちの管理を確認する意味で凄く助かったんですよ。こうしたら良いよ、とアドバイスしても『自分には自分の管理方法がある』って言ってた人が、実際にデータ見てみたら『あ、コレじゃだめだ』ってなったりしてね。」

澤口さん「『若い者が要るのは分かる。でも自分たちには必要ない。何で要るの?』って言ってた方も、実際に入れさせてもらったら、これはええ!ってなって。」

大田さん「県下を代表するようなベテランさんからも、あって良かったな、と言ってもらえたんでめちゃめちゃ良かったな。」

澤口さん「嬉しかったですね。2,30年スイカを作ってらっしゃるようなベテラン農家さんから言われて。
もちろんスイカだけじゃなくて、他の作物にも使ってもらってます。例えば花のストックといって、温度で出荷の時期が決まる花があるので、そのためのハウス内の温度管理をこのTR42でやっている方もいらっしゃいます。」

大田さん「おんどとりを導入したことによって、みんなが色んな品目で温度を気にし始めてね、本当に助かっていますよ。」
話も尽きないが、ここでトンネル内に入って内部の設置の様子を見せてもらうことに。
澤口さん「TR42は地温も測れるからいいですね。」

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大田さん「定植中は初期生育をずっと見るんですが、温度管理が一番重要なのは交配期です。交配の2週間前からの温度が特に大事になんです。もちろん交配後の温度も大事ですし、それをを記録としてずっと残していると大変分かりやすいんです。」

澤口さん「時期によって理想的な最高温度と最低温度の範囲があるのですが…。
大体こういう温度で管理するといい、という指標はもう20年くらい前からあるんです。でも例えば交配前に28℃~30℃にしなさい、と言われても2℃の幅なんて体感で分からないですよね。夜間温度も12℃から15℃と言われてもなかなか分からないです。じゃあ、最高最低温度計みたいなもので測って、12℃より下がってたらいけないのかと言うと、そうでもない。12℃以下の時間が何時間あったのか、それで本当に影響があるのかないのか? あるなら、その12℃以下になる時間をなるべく少なくするには何時にハウスを閉めたらいいのか? おんどとりがある事によって、初めて皆さんがご自分でそういうことを把握できるようになったんです。

我々も温度データを回収して『こうでした』と見せるのはできますけど、じゃあそこが何時に戸を閉めて、何時にビニールを下げたか開けたか、というのは農家さんじゃないと分からないので。それを自分が管理してて、こうすると温度がこうなる、というのが自分で分かるというのが非常に良かったと思います。」

大田さん「外気温の最高最低をトータルで90日間取っていると、現地の温度がどれだけ上がったか下がったかを見るだけで『この時期に花が悪い』とか『この時期に病気が多発している』とかが一発で分かるんです。最高最低がパッと確認できると、あ、そろそろ病気が出るな、とかここは着花不良が起きやすいぞ、とかが即座に分かるんでね、凄いです。」

澤口さん「研究・普及員だとパソコンにロガーを繋いでデータを取りますけど、農作業で忙しい中、農家さんにはなかなか現場でそんな暇はないので。」

大田さん「やっぱりスマホで手元で確認できる、というのが現場の立場としては大前提になりますね。」

みのりのモデル・田村さんにお会いする

「みのりの大地」の主人公みのりは、東京出身で倉吉の祖父の元に「孫ターン」してくる設定だ。そのモデルになった方が倉吉地区にいらっしゃるということで、お会いすることにした。

主人公みのりのモデルになった田村さんは、横浜生まれの横浜育ち。
横浜で就職して5年ほど勤務した後、自然に囲まれた生活に憧れて5年ほど前にお母様のご実家がある倉吉に移住された。
現在はおじい様の田畑を引き継ぎ、周囲の農家さんに教わりながら、それまでやっていなかったスイカ生産を始めた。

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田村さん「田舎で暮らしたい、という思いから自然に農業をやろうという流れになりました。基本的に一人でやっているんですが、トンネルとか二人以上必要な作業のときは、僕と同じような環境でやっている新規就農者の人たちと協力して作業したり、情報交換したりしています。新規就農者仲間はみんな、おんどとり入れましたよ!」

澤口さん「この辺りでおんどとりのTR4シリーズを導入したのは、田村さんが一番早いんです。」

―― そうなんですか!

澤口さん「当時、普及所で購入する前に紹介したら、その翌週にはご自分で買ってて驚きました。新規就農で温度管理は大変だよね、という話をしていたので、この人なら興味持ってくれるだろうな、と思って話したらすぐに(笑)」

田村さん「自慢じゃないですけど、かなり早い段階でおんどとりTR4には注目してました。農業関係の雑誌でTR4シリーズの情報を見て、これは来るな!と思ってました。手頃な値段でデータ取りできるのが魅力ですよね。」

Q. 新規就農のみなさんでどんな風にデータ活用されているんですか?

田村さん「おんどとり Web Storageで共有されている、ほかの皆さんの温度データも見ながらやっています。2月ごろ、スイカ栽培を始めるときに、過去のデータを見返して温度の感覚を取り戻したりもしますね。

当然、トンネルの換気のタイミングを見るのに使用していますが、それ以外の目的にも良いですね。例えば今年は実験的に、ハウスに使う被覆資材、ビニールやポリなど材質で温度がどれだけ違うのか? という比較のデータを取るのにも使っています。」

―― そういった実験のテーマなどはグループで決めているんでしょうか?

田村さん「そうですね、これやってみて!ってみんなにお願いしてデータ取ってます。」

澤口さん「試験場や普及所、生産部で資材などの試験をやっても、すぐに若い人たちにデータが渡らないし、自分たちがやりたい試験だとも限らない。そんな時、自分たちが疑問に思って試したいと思ったことをすぐ確かめられるというのは、おんどとりという機器があるからなんです。安くて複数台を自分で買えるので。」

田村さん「新しい物好きの人が、自分に興味ある物事を自分で確かめていけるのがとても良いです。今は温度だけを測ってますけど、湿度何%RHがいいのか、というのも興味ありますね。

スイカには雌花と雄花があって、交配させるにはミツバチに受粉してもらうか人間の手で受粉させるんです。交配前後の時期に湿度が高いとハチが飛ばないのですが、どの条件だとハチが飛ばないということが分かってくれば、ハチが飛びにくい温度湿度なら手交配しよう、という作業の判断がしやすくなるのかな、と思います。」

澤口さん「産地によっては積算温度で出荷時期を決めたりするので、そのためにもおんどとりのデータを活用しています。

スマート農業と言われていますけど、10万20万から100万という単位で費用がかかってしまいます。こういう手頃な値段でちょっと入れてみるとこから始めるのも大事じゃない?という話をしながら、県の中でもおんどとりを使った取り組みを、他の普及員とか若手の農家さんの集まりなどで紹介させてもらってます。

近い将来、地域の半分以上のスイカ農家さんがおんどとりを使うようになっていくんじゃないかと思いますね。」

おわりに

私事だが、筆者の父親はかつてホンダの汎用部門に勤めていた。そのため、同社の汎用プロダクトには馴染みがある。初めて「みのりの大地」を読んだときには、往年のF90耕うん機とBluetooth対応のおんどとりが同一作品内に登場したことに感慨すら覚えた。

だがそんな筆者の感傷をよそに、倉吉のスイカ生産現場ではおんどとりがもの凄い勢いで活用されており、ユーザーの皆さんがどんどんおんどとりの便利さを引き出してくださっていた。

おんどとりも耕うん機も、所詮は道具であるに違いない。そのパフォーマンスをどれくらい引き出せるかは、使い手の創意工夫と好奇心に拠るところも大きい。おんどとりはユーザーが創造力の翼を遺憾なく広げられるような、使い勝手の良い製品であり続けるようにしたい、と思った。

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インタビュー中にも紹介された倉吉独自のブランドスイカ、「極実(ごくみ)すいか」

リンク

おまけ

ティアンドデイ社内有志が制作した「みのり with ホンダ耕耘機F90 with おんどとりTR41」
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ライタープロフィール

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おんどとりイズム ライター。T&DではCX推進部に所属。趣味はウクレレ。