※記事中の組織名、拠点名、部署名などは記事公開当時のものです。
2023年の6月から、ティアンドデイの公式サイト内に新しいページがお目見えした。
その名を「T&Dラボ」という。
ラボ(lab)とは実験室、研究室という意味の英語“laboratory”の略だが、ティアンドデイが自社サイトに開いたラボとはどんなものなのだろうか?
この企画の推進役である弊社技術責任者の瀬木さんに、その内容と公開の目的などを聞いてみた。
「T&Dラボ」ってなんですか?
瀬木 弊社の主力商品であるデータロガーシリーズ「おんどとり」の活用方法を、色々な角度から紹介しようというコンセプトで作られた、ティアンドデイ公式サイトのコンテンツです。
具体的にはどんなことを紹介しているのでしょう?
瀬木 例えば、T&Dラボの第1弾として出した記事は、Bluetooth機能を持つ一般的なマイコンボードでおんどとりのデータを受信してその値を表示させる方法を紹介したものです。
BluetoothがスマホやPCにイヤホンやキーボードなどを接続できる電波だということは多くの方がご存じでも、Bluetoothを利用して色々な機能を自分で実現できることをイメージできる方は少ないかと思います。
簡単にプログラムを書ける最近のマイコンボードを使えば、誰でもおんどとりのデータを利用できるようになることをお見せしたかったのです。制御装置と組み合わせれば、温度に応じてライトを点けたり水を出したりすることもできますよ。
スマホやPCの既存アプリを使わずに、自分の手で表示やコントロールの仕組みを作れるようになるのは興味深いですね。
瀬木 その通りです。Bluetoothや無線LANを活用したアプリケーションを作ることのハードルは、年々低くなっています。以前は専門の設備や開発環境を整備しないとできなかったことが、今なら3000円台のマイコンボードで実現できる、ということを皆さんに伝えたくて記事を書き始めたんです。
T&Dラボという形で公開しようと思ったきっかけは何だったんですか?
瀬木 ティアンドデイでは以前から、製品をシリアル通信などで制御するコマンド仕様を開示していました。それらの通信仕様を使い、独自のシステムやアプリとおんどとりを連携させてお使いになっているお客様の事例を知る機会があるのですが、一般の方でもプログラミングがやりやすい環境になってきたので、具体的にどうすれば連携ができるのかを実例を交えて公開していこうと思ったのがきっかけです。
せっかくおんどとりのデータを活用するためのハードルが下がっているのに、開示している通信仕様書を見て自分でやってください、だけでは使っていただく機会は増えないですからね。
まずは簡単に入手できて、開発も比較的容易なArduino IDE (プログラムを作るための開発環境ソフトウェア) とM5Stack社のマイコンボードでできる活用事例から手がけました。
T&Dラボには以前から公式サイトにあったTIPSも統合して掲載されていますが、それらと新たに追加された記事とではどのような違いがありますか?
瀬木 それまでも出していたTIPSの情報は、おんどとりの使い方のコツであるとか、特定の用途が決まっていて「この目的のためには、どうやって使えばいいか?」ということを紹介するアプローチだったんですけど、おんどとりってそもそも用途を限定したデータロガーではないんですね。
発売当初から「こんな用途で使ってください」ということはあまりアピールせず、お客様が自分だけの使い方を見つけられるところに製品としての可能性を見出してきました。お客様からこんなところで使ってみたとか、こういうところで使えないかというお話をいただくたびに、私たちがなるほど、と気づかされることも多いのです。
T&Dラボの試みも「こんな使い方をしてください」というよりも、「おんどとりでこんなことができるんだ!」ということを知っていただきたい気持ちの表れです。
ソースコードが出て来ると難しい印象があるのですが…。どんな読者層にT&Dラボを読んでほしいと思っていますか?
瀬木 記事の内容をパッと見ると、特別なことをするエンジニア向けって思われるかもしれないですけれど、全然そんなことはありません。専門知識がなくてもできる内容なので、興味を持ってくださる方に広く読んでいただきたいです。
記事を書く時に重視したのは「とにかくコピペしてやっていけば、動く!」というところです。
おんどとりとデータのやり取りをする部分のプログラムについては細かく説明しています。逆に、Webや書籍を参照すれば見つかるような情報に関してはそこまで詳しく説明してはいないのですが、読んで試していくうちに、プログラムを書いたことがない方でも手順が分かって「あーなるほど」と納得していただければいいな、と思って書きました。
まずは難しいことは抜きにして、書いてある通りにやってみてほしいです。その後で自由に改変したり進化させたりして使っていただきたいですね。
今後、どんな人が記事を書いていく予定ですか?
瀬木 最初は私が記事を書きましたが、サーバーアプリやWindowsで動かすようなプログラムを利用する記事を、社内の他のメンバーが執筆して公開していく予定です。
またプログラム関連記事以外にも、おんどとりの意外な使い方やこんな所にも使えるんですよ、といったアイディアも紹介していきたいです。
最後に、読者の皆さんにメッセージをお願いします。
瀬木 エンジニアにしか実現できないような堅苦しいことではなく、本当に誰にでもできる!という面白さを理解してもらえたらいいな、と思ってT&Dラボというコンテンツを作っているので、幅広い読者の方に読んでいただきたいです。
あと、メーカーが自社製品と組み合わせた電子工作の紹介をするのは珍しいかもしれないですが、面白いことやってる会社だな、という意味でも興味を持っていただけたら嬉しいですね。
これからもどんどん記事を増やしていきますので、感想や実際にやってみたご報告などぜひお寄せください。よろしくお願いいたします。
瀬木さんのプログラミング原体験は40年ほど前までさかのぼる。
小・中学生の頃、まだプログラムの知識など何もないときに、当時よく専門雑誌に掲載されていたゲームなどのプログラムリストをパソコンに打ち込んでは走らせることを繰り返していた。最初は意味など分からなかったが、いくつか打ち込んでいるうちにリストを見なくても同様のプログラムが自分で書けるようになっていくことに喜びを感じたという。
時代は移り、プログラムでできることは当時と比べて非常に高度に、複雑になった。だが、自分で作ったものが思い通りに動いたときに覚える感動は昔も今も変わらないだろう。
弊社製品をご存じの方が「おんどとり」を活かす自分だけの方法を生み出す、そのきっかけにT&Dラボの記事がなれば幸いである。
T&Dラボ
tandd.co.jp/lab/