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Yosuke

小林住宅株式会社

皆様が住宅に求める「こだわり」の条件とは何でしょうか?

間取り、デザイン、ブランド、工法など、各々にこだわり条件があると思いますが、弊社のある長野県松本市においては、冬季の平均気温が氷点下という事もあり「暖かさ」を売りにするメーカーが多く、またそれを最大の条件として住宅造りをされる方も多いと聞きます。

今回は、徹底的な断熱性能にこだわり、「外断熱住宅供給戸数関西No.1」を標榜する大阪府の小林住宅株式会社様にお話を聞いて参りました。

小林住宅様は1946年創業の戸建て注文住宅専業メーカーで、約20年にわたり関西地区において外断熱住宅を供給されています。
お客様に一生涯安心して住んでいただけるよう、受注は自社のきめ細かなサポートが行き届く関西エリアのみ、年間施工数は100棟に限定し、規模の拡大は追わないというポリシーをお持ちの、まさに「こだわり」の住宅メーカーです。

信州生まれ信州育ちの私は、断熱=寒さ対策と勝手なイメージを持ち「大阪でそこまで断熱にこだわっても、そもそもそんなに寒くないよね?」と思ってしまいましたが、小林住宅様の断熱に対する「こだわり」には寒さ対策以外にも色々と理由がありました。

日付 2020年6月
訪問先 箕面市モデルルーム
使用機器 RTR-500NW、RTR-502、RTR-503、RTR-507
使用目的 モデルルーム内の断熱性能の評価と温度分布の把握

Q.まず初めに小林住宅についてご紹介ください

「弊社は創業から74年目を迎える大阪の戸建て専門の住宅メーカーです。
20年近く前から、より快適な家づくりのために断熱性能や気密性能に着目し、外断熱工法にこだわった家づくりを行っております。」と説明してくださったのは資金積算部の岡村課長。
この岡村氏こそが我々のおんどとりに着目し、導入に至るまでご尽力くださった方だ。

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岡村氏「当初、大阪でそこまでの断熱性能は不要とされ、そもそも外断熱って何?と言われた事もありました。
かく言う我々も、超高断熱を売りにする、北欧風デザインが特徴の某海外メーカーの断熱性能を過剰とさえ思っていました。
ただ、信州の寒さほどではないですが、大阪も意外に寒く、そもそも関西人は寒さ慣れしていないので、月に数回ある氷点下がとてもこたえます。
逆に夏は高温多湿なので十分な暑さ対策も必要ですが、高湿ゆえ、エアコン使用時に生じる壁内結露が高断熱化を進める上で最大のネックでした。」
「快適で結露しない家を造ろうと思うと、やみくもに断熱性能を高めるだけではなく、結露から構造を守るという視点が重要で、これを突き詰めた結果が外断熱でした。」
「そりゃ、最初はあまり受け入れられなかったですよ。」と岡村氏は笑う。

Q.小林住宅の性能へのこだわりを教えてください

「弊社の住宅は断熱だけではなく気密性にもこだわりがあります。気密が保たれていなければ宅内の空気はきれいに流れない。最新のデータでは※C値0.15を達成しています。」と誇らしげに語ってくださったのは営業部の塚本チーフ。

――「住宅の気密性を表す時、よくハガキ何枚分の隙間とか言いますよね?」

岡村氏塚本氏「いやいやいや(笑)」

岡村氏「弊社の気密性能は、ハガキではなく名刺の何分の一の世界ですよ!」
「この建物が約138㎡なので、C値*0.15だと、名刺の半分か、それ以下の隙間という事になります。」

塚本氏「そもそも、弊社がなぜここまで断熱性や気密性にこだわっているかというと、快適性はもちろんですが、お客様の健康のためなんです。」
「断熱性がしっかりし、気密が保たれ、宅内の温度差が少ない方が健康に良い。健康から逆説的に考えた結果なのです。」

塚本氏「また弊社の住宅設計においては、解放感を大切にし、家族の気配を感じ、コミュニケーションが取りやすいように設計します。」
「この大きな吹き抜けがその代表です。」
「ただ、解放感を得るという事は空間が大きくなり、結果として光熱費が高くなりがちです。しかしそれでは意味がないのです。たくさんの光熱費がかかる全館冷暖房を入れたとしても、それを快適な暮らしとは言えないと思うからです。」
「このモデルルームの空調は家庭用エアコン2台だけです。もっと言うと、夏は2階のエアコンだけ、逆に冬は1階のエアコンだけで十分快適に暮らすことができます。」
「だからこそ、断熱性能であり、気密性能なんです。」

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*C値とは
高気密高断熱を図るときに用いられている値で、相当隙間面積のことを指す値です。
この数値が小さいほど隙間が少ないことになるので、断熱性や気密性に優れていることになります。
床面積1平方メートル当たり何センチぐらいの隙間があるのかを表しています。

――「確かに、天井がとても高く、壁が少なく、本当に解放感にあふれていますね。」

Q.では、温度湿度をモニタリングした目的を教えてください

塚本氏「実は、ここまで性能にこだわっているにも関わらず、その効果を示すデータを持ち合わせていませんでした。我々営業も、温度に関しては自分たちの感覚に基づいてお客様とお話をしていました。」

「もちろん、記録機能がついていない一般的な温度計で温度の確認は行っていましたが、外気が何℃の時に室内は何℃なのか、宅内各所の温度差はどの程度なのか、年間を通したこのようなデータがなかったのです。」

「ここだけの話、住宅業界では広告だけが独り歩きし実情が伴っていないという事が少なからずあるのです。(言い切って)売り切ってしまうのです。」
「そこで弊社では、このこだわりの性能を体感していただく事はもちろんですが、年間を通した生の温度データも見ていただきたいと考えました。
お客様が、事前に住み心地を体験出来る機会は、体験宿泊会のせいぜい1~2日程度です。これでは本当にオールシーズンを通して快適かどうかがわかりません。」
「この体験宿泊会に加えて、季節ごとの温度推移のデータをご提示できたら、お客様はより検討しやすくなると思います。」

――「自社の製品に絶対的な自信があるからこそですね。」

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Q.おんどとりを選んでくださった決め手を教えてください

岡村氏「私達がやりたいと考えていた事の、もう一つ先の提案をしていただけたからです。」

「当初は、とりあえず温度の履歴データが見られれば良い、またそのデータはUSBを使い、後からPCに吸い上げが出来れば良いと考えていました。
ただこの方法だと、誰がデータを回収し、どうやって社内に共有するかが課題と考えていました。」
「そこで御社に問い合わせてみたところ、宅内各所に設置した温度ロガーのデータを無線を使って自動的に収集し、そのデータは無料のクラウドサービス(おんどとりWeb Storage)を使って共有する仕組みを教えてくださったんです。実は過去にもっとシンプルなおんどとりを使った事があり、それでも便利だったし、馴染みもあったんですが、この仕組みは驚きでした。」
「わざわざこのモデルハウスに来なくとも、どこからでもタブレットを使って温度を確認できますもんね。」

「その昔、弊社肝いりのイベントが1月2日に開催された事があり、早朝からお客様を快適にお迎えするため、元日にモデルルームの温度を確認しに行った事がありました。
その時にこのおんどとりがあればお正月からお酒を我慢しなくてよかったのにな(笑)。自宅にいながらタブレットで温度を確認し、関係者にはメールで報告するだけですもんね。」

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Q.おんどとりを宅内のどのような場所に設置し温度・湿度をモニタリングされたのですか?それはなぜですか?

岡村氏「部屋間温度差の代表と言われるのがリビングと玄関です。そこで、リビングと玄関に設置しその温度差を確認しました。」
「また、健康のためにはヒートショックを起こさない事が大事なので脱衣所にも設置しました。」
「夜中に寝室からトイレに行っても寒くない事を見ていただきたく、寝室やトイレ。」
「床下や小屋裏にも設置しました。」
「もちろん、外気温との比較が必要だったので、屋外の南面、北面にも設置しました。」
「合計で14台を取り付けました。」

――まさに家中の全てに設置してくださったのですね。ありがとうございます。

――ところで、無線通信の状態はいかがでしたか?

岡村氏「概ね良好でした。」
「ただ、外に設置したロガーの無線通信が安定しなかったのですが、センサの延長ケーブルを購入していたので、宅内にロガーの本体を設置し、センサ部だけを外に出す事で解決しました。」
「このモデルハウスではLow-Eのトリプルガラスを採用していますし、電波に対しても遮蔽がしっかりしているという事ですかね(笑)。」
「何より、14個もあるロガーを一つ一つ回収する事なく、無線で温度が自動収集され、クラウドで温度をモニタリングできる事が便利でした。今はタブレットを使って日々のデータをモニタリングしていますが、このおんどとりを使ってまだまだ他にも応用できる事がありそうです。」

「せっかくインターネットを通じて温度のデータを見られるのだから、モデルルームの温度を、HP上でリアルタイムに公開出来たら面白いんじゃないかとも考えています!」

塚本氏「営業もここまで集約された温度のデータを持ち合わせていませんでしたし、おんどとり導入後もデータ管理は岡村さん任せになっていました。」
「この温度データを営業活動に有効活用出来るよう、これからは意識を変えていかなくてはいけないなと思っています。」

岡村氏「おっ、頼むぞ営業!(笑)」

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Q.温度・湿度をモニタリングした結果、どのような結果が得られましたか?

岡村氏塚本氏「思った通り、高断熱、高気密の効果が十分に証明できる温度データでした。」
「温度はピタっと一定を保っていますし、ロフトも床下もほどんど温度のムラはありませんでした。計測を開始してからまだ一年経過していませんが、年間を通した温度データを見る事が楽しみです。」

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――驚くほど一定でムラが無いですね。
私もおんどとりで自宅の温度と湿度をモニタリングし続けていますが、ここまで一定ではありません。

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お話を伺っている間、エアコンが入っていないにも関わらず、暑くもなく、ムシムシする事もなく、外は大雨が降っているにも関わらず雨の音が全く聞こえないですね。
岡村氏「気密性が高いがために、雨の音が聞こえず、洗濯物が雨に濡れたとお客様からお叱りを受けた事もありますよ(笑)」

Q.おんどとりを使ってみた感想はいかがでしたか?

岡村氏「当初は、設定やデータの収集方法、クラウドとの連携方法などがわからなくて不安でした。しかしながら、使ってみたらシンプルで良かったです。」
「弊社の住宅を購入してくださったお客様のお宅におんどとりを設置してデータ取りを行ってみたくなりました。弊社のお客様はこだわりが強く、熱心なお客様が多くみえるので、きっとご協力いただけるはずです。
なにしろ、お客様個人で温度計を購入され、データ取りを行っている方もみえますから(笑)。」
「他メーカーの住宅と弊社の住宅とのデータ比較もやってみたいな。よく似た家族構成と面積のお宅で、温度と光熱費の比較をしてみても面白いと思うんですよ。」

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おんどとりに対する、ご意見、ご要望がありましたら教えてください

岡村氏「私が一番やりたかった事は、建物の間取り図(平面図)と断面図に温度を重ね合わせてHPで公開する事です。」
「外気が何℃の時に、宅内のどこの場所が何℃なのか、ビジュアル的に温度の分布を公開したいと思っていました。」

――弊社のおんどとりWeb StorageではAPIを公開しています。
貴社のHPから、おんどとりWeb Storageに対し、APIを使って温度データをリクエストするだけで簡単に実現できます。
貴社のような素敵なHPを作れる企業でしたらすぐに実現できると思います。

広報宣伝部 村岡氏「帰ったらシステムの担当と話し合ってみます。」

岡村氏「温度に加えて、個別のエアコンの稼働状況もモニタリングできると嬉しいです。どのエアコンがどれだけ稼働し、その結果として温度が何℃なのかというデータが取れると良いのですね。」

――おんどとりの中には「おんどとりだけど温度だけじゃないシリーズ」があります。
これは、私が勝手に命名した名称ですが、おんどとりシリーズの中に、電圧や電流(4-20mA)、パルスなどを計測する事ができるロガーがあります。
このような機器を活用する事により、エアコンの稼働状況の把握や、系統別の消費電力を計測する事もできます。
弊社のHPで実例を紹介していますのでもしよかったらご覧ください。

おんどとりTIPS

岡村氏「せっかくおんどとりを導入したのだから、もっともっと有効活用していきたいと考えています。」
「弊社の家とおんどとりの相性は抜群ですね。無駄のない、良い買い物をしたなと思っています。」
「良い製品やアイディアをご紹介いただければ、今後もどんどん会社に提案していきますよ!」

塚本氏「こんなんが欲しかった!」

――ありがとうございます。
大変うれしいお言葉に感謝いたします。

おんどとりの開発者曰く、弊社が25年ほど前におんどとりを発売した当初、真っ先に目をつけ、たくさん購入してくれた業界が住宅業界なんだそうです。
そのため、本ブログの開設当初から住宅メーカー様に取材をお願いしたいという思いが強くありました。
ようやく実現した取材で、「相性抜群、こんなんが欲しかった。」と仰っていただき感無量でした。

独創的であり、しかしながらシンプルである事に「こだわり」を持ってきたおんどとり。
これからもこだわりを大切にしながら、おんどとりも進化して参ります。

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ライタープロフィール

Yosuke

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おんどとりismライター3号でございます。