Yosuke

MDI(MOUNT DESERT ISLAND) ICE CREAM

あなたにはおすすめのアイスクリームはありますか?

コンビニやスーパーでいつも買っている、あのカップアイスですか?
それとも、旅の途中に道の駅で食べる濃厚なソフトクリーム?
晴れた沖縄の空の下で食べる、あの青いアイスクリームも美味しいですよね。

場所や銘柄に関係なく、ただアイスクリームを食べるだけで癒されて幸せになるなんてこともあるでしょう。

そんな皆様、信州に来られたら、MDI(MOUNT DESERT ISLAND)ICE CREAMにお立ち寄りください。
あなたのおすすめアイスクリームのランキングが書き換わるかもしれません。

MDI ICE CREAM(以下MDI)は2005年にアメリカ合衆国のメイン州で誕生し、現在ではアメリカで3店舗、日本で2店舗を展開しています。
「自分が食べたいアイスクリームを作る」をモットーに、個性的かつ、真正直な製法を追求しているアイスクリーム屋さんです。

2019年に松本市縄手通りに国内初となる松本店を出店し、以降その個性的なアイスクリームを求めて連日多くのお客様で賑わっています。
2022年4月には第二号店ならびにアイスクリームの製造拠点として安曇野店が開設されました。
近くには3,000メートル級の北アルプスの山々からの豊かな湧き水を活かしたわさび園もあります。
今回はこの安曇野店にお邪魔してきました。

日付 2023年3月
訪問先 MDI ICE CREAM安曇野店
使用機器 RTR500BW、RTR502BL、RTR-602L
使用目的 アイスクリーム製造に関わる温度管理全般

Q.早速ですが、MDIのアイスクリームの特徴を教えてください。

ケルトン氏「MDIのアイスクリームは乳脂肪分が多いアメリカスタイルなんだよね。
具体的に言うと乳脂肪分がおおよそ15~16%くらいかな。」

MDIの日本における総責任者であるKelton Boyer(ケルトン・ボイヤー)さんが教えてくれた。

ケルトンさんは来日して30年以上、日本人より日本人の感性をよく理解しているアメリカ人です。
日本語も完璧に操りますが、明るくてとてもフランクな語り口なのであえてその雰囲気のまま書き進めていくことにします。

ケルトン氏「日本で売られているアイスクリームの多くはフレンチスタイルで、カスタードアイスクリームとも呼ばれているけど、
その特徴はつなぎに卵が使われていることなんだよね。
それに対してMDIのアイスクリームベースミックスには卵を一切使っていないんですよ。」

「フィラデルフィアスタイルとも呼ばれるんだけど、乳脂肪分が高くてとても濃厚な事が特徴なんだよね。
ただ、毎日60リットル以上の生クリームを使うから、値段が高くて大変。
それなのに4月からまた値上げするってお知らせが届いているからもうホント大変なんですよ・・・」

「あとは全てを丁寧に手作りしているということですね。」
「ソースは、旬のフルーツを買って来て、自分達で皮をむいて煮詰めることからやるんだよね。とても手間はかかるんだけどね。
ソースを作る前にフルーツを試食するんだけど、吟味した旬のフルーツだから、美味しすぎて全部そのまま食べちゃうこともあるんだよね。
あれ?ソースにする前にフルーツ全部なくなっちゃったみたいな(笑)」

「チョコミントって一般的には明るい緑色で売られている物が多いじゃないですか?
あれって少し違和感なんですよ。本物のチョコミントならば本来茶色になるはずなんですよ。」

「バニラアイスクリームだって、うちは本物のマダガスカル産のバニラビーンズを手で剥いて使っているんですよ。
本物のバニラビーンズってすごく貴重で高い物だから、ほとんどの市販品はバニラ香料で代用しているんです。
でも、やっぱり本物のバニラビーンズとは香りが違うんだよね。
ただ、とにかく原料が高くて採算が合わないからなかなか作れないんだよね。」

Q.なぜおんどとりを採用していただいたのでしょうか?

ケルトン氏「一番はHACCPに従った温度管理をしなくてはならなかったからですね。」

「乳製品を扱う場合は特に厳しい温度管理が求められるので、自動的に記録して、クラウド(おんどとりWeb Storage)に送信してくれて、
クラウドに保存された温度データがスマホやPCを使って簡単に見られるところが良いよね。
信用できて、多様性があるので色々な工程で使うことができるし。」

「アイスクリームを作る工程の中には、パステライザーという機械を使って牛乳を殺菌する工程があるんだけど、殺菌中の温度も自動的に記録してくれるし、
仮に何か問題が起きたとしても、すぐに記録を取り出して確認することもできるし。
アイスクリーム屋さんはこの殺菌工程の温度が一番知りたいんですよ。」

※パステライザー(原料加熱殺菌機)
材料を混ぜ合わせながら殺菌してアイスクリームベースミックスを作るための装置。

「以前は原料に高温殺菌牛乳を使っていたんだけど、今は地元の牛乳メーカーが作る低温殺菌牛乳に変えたんですよ。
そのまま飲んでも風味が良いし、アイスクリームにしてもやっぱり美味しいんです。
牛乳を替えてからアイスクリームの味が変わってさらに美味しくなったと思うんだよね。
せっかく低温殺菌牛乳を使うんだから、アイスクリームの殺菌工程でも同じく低温殺菌しないと意味が無くなっちゃうんだよね。
高温殺菌ならば130℃で数秒の殺菌で済むけども、低温殺菌の場合は68℃を30分以上維持しないといけないから、なおさら温度管理が大事になってくるんですよ。
原料に風味が良い低温殺菌牛乳を使っても、温度管理がネックでこれを高温で殺菌してしまったら意味がないからね。」

「それと、殺菌工程の後にパステライザーの中でアイスクリームを一晩寝かすんですよ。
この時に必ず4℃以下でキープしなくちゃいけないんだよね。」

――アイスクリームを寝かすんですか?

ケルトン氏「アイスクリームを寝かすことで美味しくなるんですよ。材料同士がなじんで深味が増すんだよね。」

「ただ、パステライザーは冷蔵庫とは違うので、やはり寝かせている間の温度が気になるんですよ。
夜間に無人で寝かせておくから、忘れないように必ずおんどとりを仕掛けて帰るようにしています。」

――確かに「おんどとりOK?」って書かれたステッカーがいっぱい貼ってありますね(笑)

ケルトン氏「アイスクリームの味の秘訣は、温度が上がると分離して美味しくなくなることなんですよ。
我々にとっては冷凍庫に保管されている物の全てが財産だから、万が一の時は警報メールが送られてくる機能もいいね。
前にスタッフが製品保管用の冷凍倉庫の扉を開けっぱなしにした事があって、この時は警報メール機能があったから助かったよね。
僕のスマホに「ヤバいよヤバいよ」ってタイトルのメールが送られてくるから、あの時はあせったよ。」

――警報メールのタイトルの「ヤバいよヤバいよ」は私の提案でしたね(笑)

ケルトン氏「この安曇野店は、アイスクリーム製造、菓子製造、飲食店の3つの免許を持っているんだけども、特にアイスクリーム製造については
保健所から厳しい指導があるんですよ。
アイスクリーム製造の営業許可を申請すると保健所の方が監査にやってくるんだけども、「おんどとりを使って管理しています」
って説明したら、保健所の方も「おんどとりならば問題ないですね」って言ってくれてたよね。」

――食品中心温度計(RTR-602)もお使いいただいていますが。

小林氏「食品中心温度計は、ソースを作る時に材料を煮詰める工程で使っていますよ。」

――小林さんはMDI安曇野店におけるアイスクリームの製造担当者だ

小林氏「キャラメルソースを作る時に鍋でぐつぐつ煮るんですが、この時に混ぜてはいけないんです。
混ぜると化学反応が起こってしまう、でも材料がこげるかもしれない。ただじっと耐える。ジレンマです。
味見しようにも煮立っている物なので口を火傷してしまうし(笑)
こげる寸前の温度を知りたいのでこの中心温度計を使っています」

Q.他では見ない独創的なフレーバーが多いですが、その発想はどこから来るんですか?

ケルトン氏「日本で身近にある物をアイスにしてみたらどうなるのか、すごい興味があるんですよ。
それをずっと頭の中で考えてるんだよね。
どんな物だってアイスになるんですよ。アメリカにはカニのアイスだってあるからね。
子供の頃から料理が好きで、ずっとあれとあれをかけ合わせたらきっと美味しいよなって考えていたよね。」

Q.アイスクリームにしてみてう~ん・・・という物はありましたか?

ケルトン氏「パプリカは失敗だったね。グリルして、十分に甘みを引き出してからアイスにしてみたけどあれは大失敗、なんじゃこりゃって(笑)

逆にきゅうりのソルベは美味しいよね。
この安曇野店の第一号のお客さんがきゅうり農家のご夫婦で、開店の時に「今度きゅうりをアイスにしてみたいので少し分けてください。」
ってお願いしてみたらすごい怪訝そうな顔をされたけどね(笑)
でも実際に試してみたらすごい美味しくできて、キュウリとライムのソルベは今ではうちの夏の定番商品ですよ。」

Q.今後の展開や野望があったら教えてください。

ケルトン氏「今後は、卸とECサイトでの販売を拡充していきたいと思っています。」
軽トラタイプの冷凍車にもおんどとりを取り付けたので、これで商品を納品に行く時も温度管理はバッチリです。」

「あとは、沖縄やベトナムにもお店を出したいんだよね。
冬だけそっちの店舗に行ったりして。
小さいお店で良いから、売り切れたら今日はもうおしまいっていう感じでこじんまりとでも良いので。」

――賛成です。実現したらそちらの店舗にも冬に取材に伺わせてください(笑)

独創性だけを追求するのではなく、丁寧に、安全性に配慮したアイスクリームを作る姿勢は、
まさにアメリカの開拓者精神と、細部にまでこだわる日本人気質の融合のように感じました。

石井味噌バタースコッチ、マル井わさび、真澄酒粕チョコ、ジャックダニエル、きゅうりライム、ロンドンフォッグ、ベトナムコーヒー、
シナモンカルダモン、コリアンダーラズベリークランブル。
このお店には個性的なメニューがたくさんあります。
さぁあなたは何を召し上がりますか?

MDI ICE CREAM
MDI ICE CREAM Website

ライタープロフィール

Yosuke

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おんどとりismライター3号でございます。