Yosuke

National Maritime Museum in Gdansk(ポーランド国立グダ二スク国立海事博物館)

1939年9月1日、ドイツ軍によるポーランドへの侵攻をきっかけに第二次世界大戦が始まりました。
この時に攻撃を受けた町の一つが、私達が今回の取材で訪れたグダニスク(Gdansk)です。

グダニスクはバルト海沿岸に位置する人口約50万人の港湾都市で、ポーランドで最も美しい街の一つと言われています。
旧市街はゴシック、ルネッサンス、バロックといった各時代の建物で埋め尽くされ、街の中心部にはれんが造りが美しい聖母マリア教会があります。
路地を一本入ると琥珀通りと呼ばれる小路があり、石畳の道の両側には小さな商店が軒を連ね、その店先には良質な琥珀の小物やアクセサリーが並べられていました。
また、この街を象徴する景色が広がるモトワヴァ運河(Stara Motlawa)沿いには、歴史的な趣を持った建物が並んでいます。
これらの建物はおしゃれなカフェやレストランになっていて、今は、夜遅くまで多くの人で賑わっています。
このような美しい街並みからは想像し難いかもしれませんが、実は先の大戦で建物の大半が破壊されたと伺いました。
戦後、過去の写真や資料を参考にして元の街並みを再現したものが現在のグダニスクの街です。
そんな街の中に10年以上も前から私たちのデータロガー(海外ではおんどとりという名称で販売をしていません)を使用している博物館があります。

今回はヨーロッパでも有数の規模を誇る海事博物館であるポーランド国立グダニスク海事博物館(National Maritime Museum in Gdansk)に取材に行ってきました。

お忙しい中、博物館の4名の方がお話を聞かせてくださいました。

Mr.Marcin Westphal, (PhD Deputy Director of Science)
Ms.Irena Rodzik (Head of the Conservation Department)
Ms.Katarzyna Schaefer-Rychel (Deputy Head of the Conservation Department)
Mr.Eugeniusz Panto (Renovators in Conservation Department)

日付 2023年5月15日
訪問先 National Maritime Museum in Gdansk
使用機器 RTR500BW、RTR503BL、RTR-503、TR72A
使用目的 博物館の展示スペースや収蔵庫の温度湿度管理

Q.Please give us a brief introduction about the museum.
(博物館について簡単に説明してください)

グダニスク国立海事博物館(以下NMM)は1960年に設立された文化施設で、ポーランドの海洋文化の歴史とその現在を示す品々を展示・収蔵しています。
それにより、政治、経済、技術、科学にまたがるポーランドの海洋思想の発展を国内外に向けて発信しています。

2022年の来館者は全館で385,431人、2017年には過去最高の469,836人の来館者数を記録しました。
現在、Gdynia, Tczew, Katy Rybackie ,Hel(全てグダニスク近郊の地域)に分館があり、さらにŁebaにも新たな分館を建設中です。

Q.Can you tell us a little bit about the exhibits and collections the museum has?
(博物館の展示物や収蔵品について教えてください)

NMMのコレクションは多岐にわたります。
それは、バルト海の海底探査に関連する物や海事芸術のコレクションだけでなく、エトノグラフィ(集団・社会の行動様式をインタビューや観察して調査する方法)やさまざまな技術的資料も含まれています。
いくつかの展示品のうち、大きな物、例えばポーランドで最初に造られた蒸気船であるSoldek(ソウデック号)や穀物倉庫、巨大な木造のクレーンなどは、グダニスクのNMMとその支部が所有している博物館の屋外に展示されています。

Q.Until you started using the T&D loggers were you using some kind of system to monitor and log temperature and humidity?
(T&Dロガーを使用するまでは、何らかのシステムを使って温度や湿度を監視・記録していたのでしょうか?)

T&Dのデータロガーを使い始めるまでは自記記録型の温度湿度計を使用していました。
その温度湿度計はスタンドアローン動作だったので、データの送信機能や警報監視の機能はありませんでした。
記録されたデータは専門家が分析し、記録紙は担当者が保存していました。
用紙は毎週交換が必要ですが、人材が不足する中で、欠かさずに交換を行えていたわけではありませんでした。

※自記記録型温度湿度計とは
自記記録型温度湿度計は、温度と湿度の時間的変化を自動的に記録する装置です。
温度と湿度は時刻と共に回転する専用の記録紙にペンで記録していきます。

Q.What made you decide to change to T&D products?
(弊社の製品に変更しようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?)

展示スペースや収蔵庫の温度湿度データに簡単にアクセスできること、自動的に記録データの保存ができることなどがT&Dの製品への変更を決定した理由です。

今日、温度湿度を(記録して残すだけではなく)常時モニタリングすることは世界中の美術・博物館でスタンダードになっています。

最も重要なことは、収蔵品が置かれている場所の温度湿度を測定・監視して、その情報を収蔵品の管理に役立てることです。
収蔵品の状態は、温度と湿度の両方から影響を受けるため、これらの管理不足は、収蔵品の劣化、ひいては美術館のコレクション全体の劣化につながる可能性があります。

Q.How are you using the T&D data loggers here at the museum?
(貴館ではT&D データロガーをどのように活用されていますか?)

T&Dのデータロガーは、展示室や収蔵庫内約35か所に設置しています。
スマートフォンからクラウドサービス(Web Storageサービス)のデータを閲覧し、温度や湿度に異常があった場合は同じくスマートフォンに警報メールが届くように設定しています。
これにより、展示物の状態を監視する担当者が、毎日、毎週、毎月の温度湿度データに簡単にアクセスできるようになりました。
通常、温度と湿度は1週間に1回確認しますが、温度や湿度が著しく変化した場合には警報メール機能を利用する事で即座にそれが通知され、対応することができるようになりました。

Q.Can you give us some background on how you decided to purchase our logger system?
(T&Dのデータロガーが導入された経緯を教えてください)

導入した理由はT&Dの温度湿度ロガーが当館の要件を満たしていたからです。

最初の温度湿度データロガーは、2010 年にNMMの分館である「グダニスク海事文化センター(MCC)」を建設するプロジェクトの一環として購入しました。
続く投資プロジェクトである「Tczew難破船保存センター」への導入についてもMCCプロジェクト同様の理由でした。
この2件のプロジェクトは、ノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェーからの補助金、ポーランドの文化・国家遺産省の共同出資で行われました。
また、最近購入した新型のデータロガー(グダニスクにあるNMM本部の物)は、当館の予算から購入しました。

Q.T&D data loggers are made in Japan, was that a factor (made in Japan) in helping you decide which data system to purchase?
(T&Dのデータロガーは日本製ですが、その点は購入の決め手となりましたか?)

当館が温湿度監視システムを導入する際、システムに、測定精度、電池寿命、データの保存方法の利便性を求めていましたが、原産国は考慮しませんでした。

Q.After having used T&D products, what are your honest impressions?
(T&D 製品をお使いになっての率直なご感想はいかがですか?)

T&Dの製品は使い勝手が良いと思います。
クラウドを使ってデータを簡単にモニタリングができる点と、温度湿度が予め設定した範囲を逸脱したときには、すぐにスマートフォンに連絡が来るところが特に良いと思います。

Q.Please let us know if there are any points you would like to see improved or any new features you think would be useful.
(弊社製品の改善が必要な点、便利だと思う新機能があれば教えてください)

ポーランドの博物館の多くは歴史的建造物であり、壁はとても厚く造られていて、その厚い壁で各部屋が隔てられているので、そのような環境でも通信がスムーズにできるように、親機と子機間の無線電波をより強くしていただきたいと思います。

グダニスクにあるNMM本部もそのような造りで、さらにLANネットワークは館内の決まった場所にしか無いので、無線の親機であるRTR500BWをLANに接続することはできますが、それができるのは一部の展示室においてのみです。
LAN環境が無くてRTR500BWを設置することができない展示室であっても、子機であるRTR503BLを設置して温度湿度を監視する必要があります。
そのため、別室に置かれた親機と、展示室に設置した子機が無線通信できるように調整しようとしますが、電波が厚い壁に阻まれてしまいます。
できるだけ別室にある親機の近くに子機を設置する工夫が必要になりますが、それでは子機を設置する場所の自由度が低くなってしまいます。
中継器を購入すればいいのかもしれませんが、追加コストが発生してしまうことが問題です。

その他としては、館内の美観を保つという観点から、長いケーブルがついた温度湿度センサよりも、短いケーブルタイプの物の方が良いと私たちは感じています。
また、美術・博物館では展示ケースの内部にロガーを収納することを考えると、液晶がついていなくてもいいので、より小型のロガーがあると良いと思います。

おんどとりイズムを開設してから約4年半が経ちますが、コロナ禍の影響で、取材にうかがいたくてもできない時期が長く続きました。
今回、ようやく、念願の海外取材がかないました。
インタビューに応じてくださった博物館の皆様にあらためて感謝いたします。

National Maritime Museum in Gdansk
National Maritime Museum in Gdansk Website

ライタープロフィール

Yosuke

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おんどとりismライター3号でございます。