Yukichi

東京デザインサイト ~島とうがらし育成記録~

今回のおんどとりイズムは、いつもとテイストを変えて植物の育成をテーマに書いていきます。実は今年、東京デザインサイトでは小笠原諸島から島とうがらしの苗を取り寄せて、温度管理しながら育てるという試みをしました。届いた時は小さな苗だったのですが、大きく生長し、この秋にはたくさんの実がなりました。

使用機器 RTR500BW・RTR502B・RTR503B・スマジョロ(SJ1)

なぜ島とうがらしを育てたのか

オフィスのベランダで育てるということで虫や鳥といった生き物がなるべく寄り付かないような植物を育てよう、ということで候補として挙がったのが島とうがらしでした。この島とうがらしを T&D の「おんどとり」を使って地中温度や周囲の温湿度を測定しながら育てたら面白いのではないか、ということからこの企画が始まりました。

ロガーの設置方法は?

今回の測定で使用したのは、RTR500B シリーズです。このシリーズは、データ収集機とロガーをセットにして使用するシリーズになります。データ収集機 (型番:RTR500BW) は、無線LAN に接続してオフィス内に設置し、温度ロガーと温湿度ロガーの 2種類を島とうがらしのプランターに設置しました。画面向かって左側の温度ロガー (型番:RTR502B) は、本体自体が生活防水仕様なので雨にあたる程度であれば屋外に設置することが可能です。付属センサ (型番:TR-5106) はフッ素樹脂被覆電線なので、土にさして温度を測定することが可能です。今回はこの付属センサを土の表面から約5cm くらいの深さにさして温度管理を行いました。画面向かって右側の温湿度ロガー (型番:RTR503B) も本体自体は生活防水仕様となりますが、付属の温湿度センサ (型番:TR-3310) は非防水です。水濡れ NG なので雨に濡れないよう工夫して設置する必要があります。

ロガーが記録したデータは、グラフ表示ソフトウェア「T&D Graph」を使って解析することができます。では、ここから島とうがらしの生長過程と温度推移を見ていきましょう。

苗をプランターへ植え替え

5月10日、小笠原諸島から取り寄せた苗がオフィスに届きました。届いた苗を早速、プランターへ植え替えていきます。今回はその様子をタイムラプスにしたので是非ご覧ください。苗からプランターへ植え替えたばかりの状態でベランダに置くのはまだ早いと判断し、ある程度の大きさになるまでの間は室内の窓際に置いて育てることにしました。生長録を残すため、写真を撮る時は一時的にベランダへ出して撮影しました。

植え替えから45日目(6/24)

植え替え当初と比較すると葉の数が増え、大きく伸びているのがわかります。画面向かって左側の島とうがらしを「とうま」、右側の島とうがらしを「しまこ」と名付けました。

下のグラフは窓際に置いた「とうま」と「しまこ」の地中温度と室内窓際の温度推移を比較したものです。この日の室内窓際の最高温度は 29.7℃でした。この時、地中の温度は「とうま」が24.8℃、「しまこ」が24.6℃ と土の中は比較的温度が低い環境であることがわかります。この環境を維持できるよう、しっかりと水やりを行っていきます。

植え替えから80日目(7/29)

主幹が太くなってきました。葉に触れてみると厚みが増していて、目に見えた生長を感じさせてくれます。

植え替えから94日目 (8/12)

これまで土日祝の間は毛細管現象を利用した水やりを行っていましたが、夏季休暇中の水やりはこれだと不十分と判断し、T&D の自動潅水機「スマジョロ」を使って水やりを行うことにしました。スマジョロは Bluetooth通信に対応していて、スマート端末と直接通信して水やりを行う曜日と時間を設定することができます。また、無線LAN 接続が可能なので、遠隔から設定内容を変更することもできます。

スマジョロは家庭の蛇口に(*)セットすることができます。給湯室にはスマジョロを固定できる場所がなかったので、2×4 (ツーバイフォー) の板を近所のホームセンターで購入し、その板を出窓の空間に挟みました。スマジョロには留め具とネジ×4本が付属するので、こちらを使って固定しています。これまで鉢受け皿に溜まった水は自分の手で水やりする度に捨てていたのですが、夏季休暇中にスマジョロを使用すると鉢受け皿の水が溢れてオフィスの床が水浸しになってしまうため、ベランダに出すことにしました。また、「とうま」と「しまこ」の主幹が更にしっかりとしてきたので、この頃から室内に置くことはやめて、ベランダに出して育てることにしました。平日は手で水やりを行い、土日はスマジョロをセットして水やりを行うというサイクルで育てました。

(*)スマジョロが使用可能な水栓タイプについては、以下のリンクで紹介していますので参考までにご覧ください。
https://www.tandd.co.jp/support/webhelp/smartvalve/use-smartjorro.html?sc=スマジョロとは

植え替えから103日目 (8/22)

この日ベランダへ出て様子を見てみると、なんと「しまこ」に蕾ができていました。小さくてなんともかわいらしい。葉は青々として力強さを感じます。この頃から栄養剤を撒いて水やりを行いました。

この日のベランダ温度と地中温度を比較すると 14:19 頃のベランダ温度は最高となる31.9℃に到達しており、この時「とうま」は 26.9℃、「しまこ」は25.8℃ を記録していました。地中はこれくらいの温度がちょうどいいのでしょうか。

植え替えから111日目 (8/29)

いつものように水やりをしにベランダへ出てみると、先日確認した蕾が開花していました。島とうがらしの花を初めて見ることができ、東京デザインサイトのメンバー全員で喜び合いました。島とうがらしの花は白いというのもまた新たな発見でした。花の中央にある青い部分が雄蕊、中央部分が雌蕊です。虫が寄ってきてくれれば花の中をクルクル歩いて受粉の手助けをしてくれるようなのですが、渋谷のベランダに虫はなかなか寄ってこないだろう、ということで綿棒を使って人工的に行いました。あまり高頻度で行うと花が枯れてしまう恐れがあるため、様子を見ながら1日2回程度で行いました。

植え替えから119日目 (9/6)

ここまできたらあっという間に結実し、花と実がたくさん付きました。受粉すると画面中央に写っているような形状に変化します。実といえば、りんごやぶどうのように地面に向かってなるのをイメージしていたのですが、島とうがらしの場合は空に向かって実がなることを初めて知りました。

ベランダの温度と地中温度を比較しました。この日は照り返しが特に強かったためか、ベランダの最高温度は40.5℃ でした。対して、この時の地中温度は26℃~27℃ 前後でした。島とうがらしにとって、地中温度はこれ位が過ごしやすいのかもしれません。

植え替えから126日目 (9/13)

順調に生長しています。同じくらいの大きさの実が増えてきました。

グラフを見てみると、ベランダ温度は38℃超えを 2回記録しています。地中の温度を見てみると、「とうま」は27.9℃、「しまこ」は27.5℃ を記録していました。

植え替えから168日目 (10/25)

この頃から少しずつ実が赤くなってきました。先端から赤くなっていくというのも、実際に育ててみないとわからないことですね。

植え替えから174日目 (10/31)

赤いグラデーション模様だったのですが、実全体が赤くなってきました。開花確認から約63日程でここまで生長してくれました。赤い実が増えてきたらいよいよ収穫です。

植え替えから199日目 (11/4)

赤い実が増えてきたので収穫します。ご覧のようにたくさんの実がなりました。

11月に入ると気温はぐっと下がりました。この日のベランダ温度は最高でも 22.8℃です。地中の温度は「とうま」が 16.5℃、「しまこ」は 16.0℃ とだいぶ下がりました。

これは収穫した一部です。東京デザインサイトのメンバーだけでは消費しきれないので、松本本社にもおすそ分けしました。収穫した島とうがらしはポトフに入れたり、ペペロンチーノを作るのに使ってくれています。実がなるまでの間、天候や温度を気にしたりして大変でしたが、たくさん収穫することができた時は大きな達成感を得られました。

おわりに

今回は温度を記録しながら島とうがらしの生長を見守りました。一日の外気温のグラフを見てみると、日中は急激な温度上昇が見られますが、同時に土の中の温度グラフに注目すると比較的緩やかな温度変化を見せていました。外気温のように、急激に温度が上昇するというような推移は見られなかったと思います。また、蕾ができる・開花・実がなるといった変化の現れがあった時の温度データを振返ってみると、土の中の温度は大体 27℃前後であることが多い印象を受けました。私は植物に関する専門的な知識がないのですが、専門分野に携わる方々はもっと違った見方で解析し、おんどとりをご活用いただいているかと思います。私自身としては、今回の取り組みが植物の生長と温度の関係について考える良いきっかけになりました。

また、T&D といえば「おんどとり」というイメージがあると思いますが、実は温度管理を行う機器だけでなく、自動潅水機も取り扱っています。今回はオフィスの給湯室に設置するためにスマジョロを使って水やりを行いましたが、兄弟機種として配管に接続可能な「DoValve」という機種もございます。今回使用した機器は先日開催された「農業Week」にも出展しました。農業Week の記事はこちらからご覧ください。もし、これからまた他の物を育てたらこの「おんどとりイズム」で記事にしたいと思います。

ここまでお読みいただきありがとうございました。

ライタープロフィール

Yukichi

Yukichi

東京デザインサイト所属。 星の写真撮ったりしてます。